留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人
は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。

解答×留置権は「他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに、その債
権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。」という担保物権である。(民
法295条1項)
しかし、判例は「造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権であって、建物に関して
生じた債権ではない。」としている。(最判昭29.01.14)したがって造作買取代金債権を
持っていたとしても、それを理由に当該建物を留置することはできない。

2 不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が
所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置
することができる。

解答×判例は「不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場
合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不
履行に基づく損害賠償債権をもって、留置権を主張することは許されない。」としていま
す。(最判昭和43年11月21日)
この場合の損害賠償債権は不動産に関して生じた債権とはいえないからです。

3 建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して
有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することが
できる。

解答×判例によると「建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、
権原のないことを知りながら建物を不法に占有する間に有益費を支出しても、その者は、
民法295条2項(占有が不法行為によって始まった場合には、留置権は発生しないという規
定)の類推適用により、有益費の償還請求権に基づいて建物に留置権を行使することはで
きない。」とされています。(最判昭和46年07月16日)

4 建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第
三者が所有する敷地を留置することはできない。

解答〇建物の賃借人が有しているのは建物に関して生じた債権です。
したがってその債権を有していることを理由に建物が立っている敷地について留置権を行
使することは認められません。